EU著作権法改正の最大の争点!ジオブロッキング(Geo-blocking)とはなんだ?

先日、「EUの著作権法改正の一番の争点は?」と聞かれた。そのときは言及することができなかったのだが、あとになって大きなテーマを思い出した。

それが、ジオブロッキング(Geo-blocking)だ。

ジオブロッキングとは、「ユーザーとサービス提供者の間の地理的要因によってオンラインサービスへのアクセスが拒否されてしまうこと」。日本に住んでいても、たとえばYoutubeなどを見ているとき、「このコンテンツはお住まいの地域ではご覧になることができません」などというメッセージが出て動画が見られなかった経験があるのではないだろうか。これはコンテンツ提供者がある特定の地域でしか配信を許可していないことで起こっている。

日本ではあまり話題になることはないが、EUではこれが大きな問題になっている。

たとえばドイツでAmazonプライムに登録して、その後イタリアに行って映画を見たくなったとする。いまのEUの法律ではジオブロッキングが禁止されていないため、コンテンツの提供者(映画会社)がイタリアでその映画を配信していなかった場合、イタリアではその映画を見ることができない。

「欧州単一市場」のプロジェクトによって、EU域内の「ヒト・モノ・カネの自由な移動」を完成させてきたEU。これに加え、2020年までの「デジタル単一市場の完成」を標榜するEUにとってこれはおおきな障壁だ。

欧州副委員長であるアンドルス・アンシプデジタル単一市場担当相(エストニア)は「ジオ・ブロッキングは欧州域内に残る差別である」とかなり強い口調で批判している。

いっぽうで、従来のコンテンツ製作者(出版社・映画会社…)はジオ・ブロッキングは必要だと主張している。

その理由は「ジオ・ブロッキングが撤廃されると国ごとに権利許諾を売ることができなくなる」というもの。

たとえばイギリスの映画配給会社がスウェーデンの映画配給会社に映画をオンラインで配信できる権利を売り、それがヨーロッパ中からアクセスできてしまうと、ほかの国がその映画配信権を買わなくなってしまう。また、ヨーロッパでは映画制作にかかる膨大な資金を各国に配信権を前売りすることでまかなっており、ジオ・ブロッキングが撤廃されるとその前売りができなくなり映画産業全体が縮小する、などという意見もある。

「インターネットは国境を越える」と口癖のようにいっているジュリアはもちろん、ジオ・ブロッキングは撤廃されるべきとの考え。その理由はおおきく分けてふたつ。

  • ユーザーの観点…ヨーロッパのある場所で買ったコンテンツが別の場所で見られないのは不便であり、EUの中心理念に反するという考え
  • 文化的マイノリティ保護の観点…ジオ・ブロッキングが撤廃されることによってコンテンツがヨーロッパ中のどこからでもヨーロッパの言語的・文化的マイノリティがひとびとに彼らの文化を伝えやすくなるという考え

ほかのコンテンツに先駆けて、オンライン音楽の配信に関してはすでにジオ・ブロッキングを廃止する目的のEU指令が2014年に発布している。しかしこの指令は著作権クリアランスの複雑化などあらたな問題を生み出し、問題はまだまだ山積みだ。(ちなみに私の卒論のテーマはこれだった)

EU改正著作権法とジオ・ブロッキング問題。EUはどのように解決策を見出すのだろうか。


 

2015年末にせまった欧州委員会の改正著作権法令の草案公開にむけて、ジュリアはジオ・ブロッキングの撤廃に向けてキャンペーンを展開している。

その一環としてジュリア・レダ事務所ではイベントを打つことになった!

その名も「Portability: Opportunities for cultural diversity?

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日程は12月8日。そのようすはまたブログにあっぷします。