液体民主主義って?リキッドデモクラシー欧州初会合 レポ一日目

ジュリア・レダ議員が主催する第一回液体民主主義(LD)ミーティング(1st Liquid Democracy Meeting)、参加してきました!たまたま他の海賊党員から提案を受け、応募してみたら参加依頼が来た今回のミーティング。自分はソフトウェア開発者でもなく、LDの知識も十分でなかったため、始まる前は不安でしたが、未来の政治のあり方を構想するさまざまな提案や議論に触れ、本当に有意義な2日間を過ごすことができました。2日間に渡るミーティングの様子をレポートしたいと思います!

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一日目

14:30、まずはジュリア議員から挨拶。ベルリンでリキッドフィードバックを使ったLDが構想されてから、さまざまなソフトウェアが開発され、さまざまなLDプロジェクトが立ち上げられたが、今までそれらを包括するイベントがなかった。また、LD提唱者やソフトウェア開発者同士が情報交換をしたり、互いに協力したりするコミュニティも今までなかったので、このミーティングを通じてLDという試みを総括し、LDに関わる人たちをつなげ、LDをさらに発展させていきたいとのこと。それに加えて、ジュリア議員自身も、海賊党唯一の欧州議会(EP)議員として、LDを自分の意思決定に積極的に活用するつもりである。そのため、EPリキッドというプロジェクトを立ち上げ、どのようにして海賊党の意思をEPに反映させていくかを考えていきたい、このミーティングをその発端としたい、と力強くメッセージ。

次 にアシスタントのクリストファーさんから、イベントの詳細説明と参加者の気をほぐすためのちょっとしたエクササイズ。「政治アクティビスト」「ジャーナリ スト」「研究者」など、自分がそのジャンルに当てはまると思ったものに手をあげて、参加者がどんな人たちなのかを知ろうというもの。ここで「ハッカー、も しくはサイバーアタッカー?」というクリストファーさんの問いかけに、なんと会場のほぼ2/3が挙手するという展開に!ICTに精通している参加者の多さを垣間見る一コマ。

いよいよミーティング開始。
一日目は、
LD関連のソフトウェア開発者が自分たちのプロダクトのプレゼンテーションをする日。
以下がプレゼンされた
LDソフトウェア一覧とその特徴。

リキッドデモクラシー実装プロジェクト

プロジェクト名 開発拠点 特徴
LiquidFeedback ドイツ海賊党 2010年にローンチされた世界初のLD実装プロジェクト。
Pirate Feedback ババリア海賊党 LiquidFeedbackの問題点を修正。鎖型委任(chain voting)ではなくランク型委任(preferential voting)システムを採用。
Uniliquid オーストリア海賊党 LiquidFeedbackとPirateFeedbackを「発展」させたプログラム。ユーザーインターフェースの利便性を追求、凍結期間の廃止など
Parelon イタリア海賊党 「オンラインe-議会」を推奨。ウェブベースで法令を修正できるソフトウェアを実装。

その他、類似プロジェクト

プロジェクト名 開発拠点 特徴
Agora Voting スペイン セキュリティとプライバシー保護に重点。
Adhocracy ドイツ・ベルリン 投票プラットフォームとしてよりも熟議や諮問に重点。
DemocracyOS アルゼンチン・ブエノスアイレス 初期からモバイル対応しておりユーザー利便性を追求。すでにのべ30000人の参加者を獲得、200以上の法案を成立させている
GetOpinionated ベルギー海賊党 マルチ・プロキシーシステム(票の複数人への委託)を採用。

また、今後のLD構想、プロジェクトを持っている有志もそれぞれ彼らの考えを発表した。

  • LDにおけるゲーミフィケーション
  • LDの匿名性と検証可能性をどう両立するか
  • ベルリン・LD会議について
  • 青少年へのLD教育
  • 米国政治へのLDの導入 (Make Your Laws)
  • 法案の視覚化 プロジェクト(Thumbs of Europe)
  • LDを用いたビジネスモデル構想 (Kudocracy)

興味深かったのは、同じLDソ フトウェアでも、開発者がなにに重点を置くか、さらに言えば、開発者が「何を民主的とみなすか」というビジョンによって、プロダクトの性質も大きく異なっ てくるということだ。たとえば意思決定前の熟議に重点を置くことがビジョンならば、議論期間や凍結期間は自ずと長くなるし、一方でユーザー利便性、普遍 性、わかりやすさなどを追求するならばプロダクトはよりシンプルなものとなる。プロダクト一つをとっても、その背景に開発者それぞれの「民主主義」の定義 とビジョンがあり、そしてそれらは必ずしも互いに合致するものではない。ここに民主主義の客観的な定義のむずかしさと、それを「適切に」現実に実装するこ との困難さを感じた。

またもう一つの気づきは、LDがなし得ることは単に「ソフトウェアの活用による、間接民主主義から直接民主主義への移行」だけではないということだ。LDの先駆けとなったリキッドフィードバックは、特定の政策に対する有権者の直接投票と、自発的な投票の委託による間接参加を可能にした。このことから、LDと は「有権者が政治に直接参加するか間接参加するかを自主的に選択することができるシステム」だと捉えていた。しかしプレゼンテーションを通じて、その定義 はあまりに狭量だということに気づいた。たとえば法案を「見える化」するサービスは市民によりわかりやすい政策知識を提供し「インフォームド・ポリティク ス」を実現していくという試みだし、コミュニティ内で法案修正をより容易にするサービスは法案決定に熟議民主主義を導入しようと言う試みだ。つまり、LDが目指すものとは、「間接民主主義(参加)から直接民主主義(参加)へ」という一線上の移行だけではない。むしろ、LDとは、より広い意味で、「より良い民主主義の実現」あるいは「新たな、そして理想的な民主主義の形の模索」に挑戦することなのだと感じさせられた。

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次は二つのグループに分かれてのバーキャンプセッション。「LDコミュニティのこれから」とジュリア議員のLDを欧州議会に導入する構想(EPリキッド)のうち、EPリキッドの議論に参加。ジュリア議員は、海賊党唯一の代表として自分の政治決定に海賊党からのフィードバックを取り入れること、またLDコミュニティが持つリソースを無駄にせず、自分の任期中にLDを推進していくことを希望している。しかし、一欧州議会議員としてジュリア議員ができることは制限されているため、どのようにすればより効率的にLDを用いて海賊党の総意をEPに反映させられるか、というのが議論のテーマだった。

EPリキッドの具体案として、以下のような提案が挙がった。

  • LDでの決定を欧州委員会に諮問・問題提起
  • 欧州議会本会議での賛成/反対/棄権の選択をLDで決定
  • ジュリア議員が担当する法案の修正をLDによって決定
  • 本会議でのスピーチをLDによって決定
  • LDに関するイベント&キャンペーン&PRプロジェクトを展開
  • LD開発者をブリュッセルに招待

ここでおもしろかったのはEPリキッドのターゲット層の話。ジュリア議員は先のEP選挙ではドイツ海賊党(40万票)から当選したが、ドイツに限らなければ海賊党の獲得票数は全ヨーロッパ80万人にのぼる。現行の選挙制度では「ヨーロッパ選挙」なるものはなく、有権者はドイツ人ならドイツの、イギリス人ならイギリスの、フランス人ならフランスの候補者に投票しなければならない。ここでEPリキッドを「誰に向けたものにするか」が問題となってくる。理論的にはジュリア議員はドイツから当選した「ドイツの代表」なのだから、EPリキッドはまずドイツ海賊党員に向けられたものにするのが道理だが、海賊党は国家に縛られない国際的な政党であること、彼女自身が自分を「海賊党の代表」とみなしていることを考えると、早期でEPリキッドを国境フリーなプロジェクトとすることが求められる。そのための障壁をどのように克服していくか、またドイツ海賊党と他国の海賊党をどう統合させていくか、が大きな争点となった。議論を通じて、EUという世界でもっとも先進的な国家共同体のもっとも先進的な政治組織においてでさえも、国家という政治単位を超えることが(文化的、技術的に)如何にむずかしいかということを感じさせられた。また同時に、それでもなお国際政治における国家という絶対的な共同体を超えようという強い野心を参加者の発言から感じ、改めてEU政治のおもしろさ、革新性を感じた一時だった。

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夜は欧州議会隣のレストランでディナーと懇親会。なんとここで、翌日(1130)が ジュリア議員の28歳の誕生日だということがサプライズ発表!みんなでお祝いすると、「いつも自分の誕生日に何するか考えなくちゃいけないのが面倒くさい から、毎年このミーティングで予定を埋めちゃいたいんだけど」と議員からうれしいコメントが。他にも、ドイツ、チェコ、ベルギー、エストニアなどの海賊党 のメンバーや、さまざまなソフトウェア開発者と交流し、素晴らしい時間を過ごすことができました。

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