【徹底討論】「海賊版」のなにが悪い!?【著作権改正議論】

TPP合意を受けて、著作権改正議論が盛り上がっている。

たとえばこんなかんじ

議論が盛り上がるのはすばらしいことだ。すばらしいことなのだが…

「海賊版は撲滅すべきだし、できる」という妄言を吐いている人しかいない状況はいったい何なのだろうか。

ギネスにも載ってる、日本歴代ダントツで売れてる漫画は海賊漫画だというのに、海賊へのこの風当たりの強さよ…

©1997 Eiichiro Oda

実際のところ「海賊版と二次創作をはっきり線引きすることなど不可能」だし、それを区別してさらにしっかり二次創作を残し「海賊版だけ」潰すなんてことはさらに不可能なのだが、それを考慮していないひとが多すぎる。

さらに不安を感じるのは、「海賊版撲滅!」と言っている人から「海賊版が撲滅した世界」のビジョンがまったく見えてこないことだ。

仮に海賊版が撲滅できたとしたら、

  • 誰が発売したばかりの漫画や放送されてすぐのアニメを世界のあらゆる言語に翻訳し、流通させるのか。
  • 誰が自発的にファンコミュニティを立ち上げ、日本のポップカルチャーをシェアし、発信していくのか。(誰が正規版グッズ販売の情報を翻訳し、海外ファンのために導線を貼ってくれるのか)
  • 誰がMAD動画やインターネットミームをつくり、日本の面白さ、クレイジーさを世界に広めてくれるのか。
©2013 Christopher Torres
これも海賊版から生まれ、2011年のYouTube再生数ランクで5位にランクインした

日本の制作会社は果たしてこれらができるのだろうか。全世界のコンテンツの流通をコントロールし「海賊版がなくなった世界」以上に「クールジャパン」を推進していくことができるのだろうか。

とてもそうは思えない。

私はドイツの某大手漫画出版社で働いていたこともあるが、そのときの状況は惨憺たるものであった。

日本の出版社から送られてくる「正規版」の資料が遅すぎて(しかも翻訳など当然されていない)、ネットに流通している海賊版でその作品がどんなものなのかをチェックする制作班(会社の名誉のためにいっておくがこれは決してドイツの制作サイドが悪いのではない。作品名でGoogleにかけたら最初のヒットが海賊版なのだ)。翻訳版のe-booksの出版にも多大な議論と労力を要し、しかもそれを(英語の苦手な)出版社ひとつひとつと掛け合わなければいけない状況。しかも作者がデジタル化に何色を示せば今までの議論が白紙に戻り、翻訳正規版の流通はさらに停滞し、海賊版にさらに遅れをとっていく………

こんな状況では、海賊版が蔓延するのもまあ当然だろうなと思わざるを得なかった。

そして泣けるのは、こんな状況でも(ネットにいくらでも海賊版が落ちていて、無料でそれを入手できる場合でも)、海外のファンは日本のとんでもなく遅い正規版の流通を待ち望み、それが出れば喜んで買い(ちなみに日本の漫画の正規版はドイツでは日本円にして1冊900円を軽く超える)、自分たちでファンイベントを行ったり、大きなイベントで日本からのゲストが来るときは大喜びで参戦するのだ。日本のファンと何の変わりなく

「海賊版を撲滅する」というのは、すなわち彼らに対抗できるだけの正規版の流通を行うということだ。

  • 全世界あらゆる言語の正規版を日本語版と同時に発表すること(コンテンツのデジタル化はまず基本)。
  • もちろんグッズ販売などの情報も世界のあらゆる言語で同時に販宣(販売はリーズナブルな値段で。雑誌一冊20€とか正気の沙汰ではない)。
  • さらに当然、アーティストのファンクラブ情報や、とにかくコンテンツのあらゆる情報を世界のあらゆる言語で同時発表。

これくらいできてはじめて「海賊版が撲滅した世界」以上にコンテンツの流通が見込めるし、「海賊版対策を取ろう」と一瞬でも考える資格があるというものではないか。

そして断言するが、日本のコンテンツ会社にはこんなことはできない。

いったいどこに日本のコンテンツ会社にこれだけのことをする企業体力と、その意欲が残っているのだろうか?そして、これを「内向き」で知られる日本のコンテンツ企業が中央集権的にやったところで、そのコンテンツは果たして「オモシロい」のだろうか?

それを無料で、自発的にやってくれるのが、日本が忌み嫌う「海賊」たちなのである。さらに、彼らには拡散する力があり、面白くコンテンツを切り取り、リミックスしてくれる潜在性があり、さらに自分たちそれぞれの文化に日本の文化を適合させてくれる力がある。海賊版を生み出す無数のボランティアこそ、日本のコンテンツの魅力を最大限に引き出す立役者なのである。

海賊たちを活用してできることはたくさんある。二次創作をオリジナルに還元するプラットフォームやファンクラブなどのボランティアを活用した翻訳プラットフォーム(ファンクラブをウィキペディアの様に翻訳をうながす仕様にするのも面白い)。翻訳版の同時配信を促進するため、海賊版を活用すること(ちなみに、世界で一番大きな日本のアニメ海外配信サイトは元・海賊版サイトである)

日本のポップカルチャーはインターネットと、海賊版に支えられて発展してきた。だからこれからも、海賊を有効活用し、ともに歩んでゆくべきではないのか。

まずは「海賊版だから」といって思考停止して彼らをシャットダウンするのではなく、彼らとコミュニケーションをとり、海賊版を使って何ができるのかを考えるところから始めよう。

©1997 Eiichiro Oda
日本こそ「海賊王」になるべき国だ!!

4 thoughts on “【徹底討論】「海賊版」のなにが悪い!?【著作権改正議論】

  1. すごく、面白い記事だ。
    そもそも、新作のアニメもそうだが,未視聴のアニメのBDなんて絶対に買わない。
    地方に住む人間はアニメが放送されない、事実を知っているのだろうか?
    有料放送?レンタル?有料放送がテレビ放送と同じタイミングで放送されるならお金払ってみてもいい。
    しっかり、すべてのアニメをおさえていますか?見たいものがピンポイントでない。
    レンタルなんてもってのほか。
    正直海賊版サイトがなければ、深夜アニメなんてみてもなかったね。今ではフィギュアを買いあさりお気に入りのアニメBDを棚で寝かせてるのも。そういったサイトがあるからなんだよな。

    この記事でもあったがほんとに撲滅した後のこと考えてんのかね?日本のアニメ終わるよ。

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