【著作権】TPP大筋合意。「二次創作は守ってほしいけど、海賊版は殲滅」がムリな3つの理由【海賊党】

TPP大筋合意が報道された。著作権条項の新規定は、・保護機関死後70年延長・非親告罪化・法定賠償金の3点セットがリークされたとおり、まるまる入っていた。

この報道を受けて、

「二次創作はちゃんと守ってほしいけど、海賊版はこれで殲滅できるね!(^^)」

的な論調を見かけた。

あの…どうやってそんなことが可能なんでしょうか(^ω^;)

二次創作は守るべきだけど海賊版は撲滅しないとダメ」という(政府お決まりの)議論がいかに空虚な虚論(二重単語)であるか、3つの点にまとめてみた。

1.どうやって二次創作と海賊版を区別するのか?

ここでいう海賊版とは多分、「正規で売られていないコンテンツのデッドコピー」のことを指すのだろう。では、元のコンテンツからテクスチャを少し変えたコンテンツは、「二次創作」なのか「海賊版」なのか?色身をすこしだけ変えたものは?左右反転しているものは、「二次創作」なのか「海賊版」なのか?

これらがすべて「海賊版」というなら、では元の動画から音声を少しだけ変えたものはどうだろうか。半分変えたものは?全部変えたものは?これらも「海賊版」というなら、ゲーム実況動画やアニメ実況動画はほとんどアウトになる。「ロイツマ」や「ウッーウッーウマウマ(゚∀゚)」などの感染系動画も全部アウト。音楽をそのまま引っ張ってきているのだから、間違いなく「海賊版」である。

これは「海賊版」か「二次創作」か?

なにも改変していない「そのまま」のコンテンツのみが海賊版というなら、たとえばOne Pieceのある一話を1ページずつ、別々にアップするのはどうだろうか?コンテンツそのものをすべてアップしているわけではなく、「切り抜き」として改変はしている。それを1ページずつアップしたあとに、どこか別の場所で1つのフォルダにまとめてしまえば?これは海賊版だろうか、コラージュという名前の二次創作だろうか?

重要なのは、「二次創作と海賊版を明確に線引きすることなどできない」ということだ。特にデジタルコンテンツの場合、改変が容易いのでその線引きはもはや無意味に等しい。

2. 誰が、どうやって、その「海賊版」を殲滅するのか?

なんとか1.の疑問をクリアして「海賊版」と「二次創作」の区別がついたと仮定しよう。

では、毎日アップされるコンテンツを、誰がどうやってチェックし、大切な「二次創作」を守り悪魔の「海賊版」を殲滅するのか?

ニコ動やpixiv,Youtubeやほかのオンラインプラットフォームに毎日アップされるコンテンツは数千万、数億にも及ぶ。これらすべてを著作権の専門家がチェックすることは不可能なため、必然的に、ある特定のアルゴリズムで動くソフトウェアにその判断を任せなければならないことになる。

もちろんソフトウェアは人間ではないから、「これはちょっと著作権的にヤバいけどクオリティが高い、残しておこう」なんてことは考えるはずもなく、文字通り機械的に「海賊版」と誰かが決めた基準にしたがって削除を繰り返すだけだ。そのなかには素晴らしい二次創作があるかもしれない。オリジナルの認知度を高め、一大ムーブメントを巻き起こすようなコンテンツがあるかもしれない(「ニコニコ動画組曲」など、過去にもたくさん例はある)。また、「神作画集」など、歴史に埋もれてしまったコンテンツを再発掘するようなものもあるかもしれない。それらはソフトウェアのアルゴリズムによって、-人間の判断が下されることなく-消されてしまうのだ。

ちなみにアメリカでは、この動画が著作権侵害として訴えられ、8年にも及ぶ裁判が続けられ、やっと今月アップロードしたユーザーの勝利が確定した。

さらに、P2Pファイルシェアなども取り締まりの対象とするならば、私的なコミュニケーションがすべて企業や政府によってチェックを入れられることを許すことになり、大量監視社会の幕開けとなる。家族や友達に動画を送ったらそれらはすべて監視され、「海賊版」と判断されたものは取り消されたり、逮捕されたりすることもあり得る。なんだかSFの世界のようではないか。

3. 正規版がないから、海賊版が流通する

一番腹が立つ&意味が分からないのは、海外における「海賊版」対策だ。

海外のアニオタも、日本のアニオタとなにも変わらない。アニメの最新話がでたら1秒でも早く観たい、いやフライングしてでも観たい、それがアニオタというものである。

日本企業は、これらの海外オタクのニーズにちゃんと応えているのだろうか?全アニメ・漫画の一話一話を世界20言語で日本語と同時配信くらいはしてから「海賊版対策」などと抜かしているのだろうか? 現状、あの「ジャンプ」ですら公式サイトが英語版しか対応していない。(しかも同時配信かは不明) 10億人の潜在読者がいる中国語すらないのだ。さらに最近のニュースで聞いたのは、2年ほどまえにブームになった「妖怪ウォッチ」をいまさらアメリカで公式展開するという体たらく。遅い。すべてが遅すぎる。デジタルコンテンツは鮮度(と迅速なマルチメディア化)が命であるにも関わらず。

海賊版は、正規版がないから流通するのだ。日本では漫画家さんの意向で電子書籍化できないコンテンツがあったり、翻訳版が異常に遅かったり(もう一度言うが、オタクの前では同時配信以外の選択肢はすべて「遅すぎる」である)、無意味に検閲がかけられていたり、配信サイトがめちゃめちゃ使いづらかったり(英語が不自然だったり)、とにかく正規版のクオリティが異常に低い。

この状況で「海賊版対策」など、海外ファンへの迫害というほかない。

そして確実なことは、オタクがオタクでありつづける限り(深い命題だ)、彼らはどんな手を使ってもそのコンテンツにアクセスする、ということだ。それこそPirateBayが不死鳥のように何度も蘇るように、アメリカ企業が何度訴訟を起こしても違法ダウンロードは消えないように、海賊版は決して止まらないだろう。

世界20言語ですべてのコンテンツを日本語と同時配信」と上に書いたが、それはかなり難しいだろう(もちろん、出来れば良いに越したことはないが)。この記事でも述べたように、日本のコンテンツは分散型。どこで、何語で、どのようにコンテンツが消費されるのか誰にもわからない。日本のプラットフォームの提供の仕方が海外に合うとも限らない。しかし、コンテンツはプラットフォームを越えて拡散することができる。そしてそれこそが、日本のコンテンツのおもしろさなのである。とくにクールジャパンの中枢であるアニメ・漫画文化は、オンライン文化とともに成長してきた。オンライン文化とはすなわち「みんなでつくる文化」のこと。某魔法の国の企業のように夢が一方的に与えられるのではなく、みずからがコミットして、それが誰かに反響して、その反響がまた誰かに影響をあたえ、文化がインタラクティブに形成されてきた。こんな文化はほかの国にはない。こんなにオンラインのコンテンツの自由な流通に即して発展してきた文化など。

だから、日本は「海賊版」を味方につけて、このオンラインコンテンツの海に乗り出すべきだ。

重要なのは、クオリティの高い正規版の普及(NetFlix,Spotifyなど参考にすべきプラットフォームはたくさんある)。翻訳版同時配信を含む海外への意識をもっとあげること(ここに海賊版を活用したっていい)。二次、三次ライセンスの促進マルチメディア化。同時に海外ライセンス付与の簡便化。コンテンツが拡散すればするほど、利益が得られるサイクルをつくること。コンテンツに触れた人がなんらかの形でその文化の「サークル」内に入りやすい環境をつくることや、二次創作からオリジナルへ還元するシステムをつくること。クリエイターを保護し、彼らにちゃんと対価を与えること。ビジネスサイドでできることはまだまだある。

そのために、まずは著作権が変わらなくてはならない。二次創作やコンテンツの自由な流通、そしてあらたなビジネスチャンスを阻害するこの著作権を、国内法で抜本的に改革する必要がある。TPPは残念な結果となってしまったが、これを国内法を変える好機としよう。著作権法改正議論が活発になることを期待する。


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