基本的人権と著作権─マラケシュ条約はどこへ行くのか

今日は、2013年に採択されたマラケシュ条約の理解を深め、EU加盟国の批准を求めるカンファレンスに参加した。

マラケシュ条約とは

正式名称、「視盲人,視覚障害者及び読字障害者の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約」。2013年の世界知的所有権機関(WIPO)の外交会議で、日本、EUを含む129ヶ国によって採択された。この条約は、視覚障害者や識字障害者が点字、活字、オーディオブックなどといった出版物へよりアクセスしやすくするために、各国に著作権法の制限と例外を求めたものである。

マラケシュ条約は署名・採択されたが現在批准過程である。日本はまだ批准していないものの、著作権法37条にて「視覚・聴覚障害者のための複製」という例外規定が設けられているので(ヤルじゃん)、問題は少ないものと思われる。

問題はEUである。

現在EU28カ国中21カ国がマラケシュ条約の批准に賛成しているものの、ドイツ・イギリス・イタリアといった大国が国内法に問題を抱えており、批准が難航している。その背景として、これらの国は文化輸出国であるため、ドイツ語や英語の本が著作権の範囲外で点字本になったりオーディオブックになったりすることでビジネスの機会損失を恐れていることがあげられる。

今回のカンファレンスは、批准に消極的な、これらの国への強い糾弾があった。

『本を読める』という権利は基本的人権である。そしてデジタルテクノロジーは、いままで障害を持たないひとにのみ与えられていたその権利を、障害をもつひとも等しく与えられることを可能にした。いま、法律でそれを禁じようとしていることは、基本的人権を侵害するのと同義だ。という意見。

点字やオーディオブックといった出版物は需要がすくなく、マーケットとして成立しづらいため、市場原理にまかせるといつまでも視覚障害者の「本の枯渇」問題が解決されない。ぜひEUレベルでこれを解決するよう、取り組んでもらいたいという呼びかけ。

デジタルテクノロジーが障害をもつ人々の可能性を拡張すること、市場の失敗とその解決法、デジタル時代の著作権法と基本的人権。さまざまなことについて考えさせられるカンファレンスだった。


3 thoughts on “基本的人権と著作権─マラケシュ条約はどこへ行くのか

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