著作権法改正は、イノベーションや経済発展にも貢献する!ハーグリーブス・レポートで英教授が提案したこと

先週ジュリア(海賊党欧州議会議員)が出席した EPIP(European Policy for Intellectual Property) 2015 というイベントでプレゼンターをしていたイアン・ハーグリーブス(Ian Hargreaves)教授。彼が2011年にイギリス政府に向けて提出した、ハーグリーブス・レビューについて調べてみた。

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イアン・ハーグリーブス教授とは

1951年生まれ、ウェールズ、カーディフ大学教授。デジタル経済を専門とする。
2010年、英キャメロン首相に招聘され「知財法枠組みがどのように成長とイノベーションを促進するか」に関して政策を助言。2011年、彼の研究レポートは「Digital Opportunity: A Review of Intellectual Property and Growth (デジタルの好機:知的財産と成長に関するレビュー)」(別名ハーグリーブス・レビュー)として発表され、英政府はこのレビューを、のちの著作権法改正に適用させる具体的な取り組み目標を発表。

つまり昨今の英著作権法改正議論に多大な影響をもたらしている教授である。

ハーグリーブス・レビューで提言されているのは以下のようなポイントである。(訳はJetroのプレスリリースを参考にした。)

  1. エビデンス・ベース
    知的財産制度の発展が客観的証拠に基づいて可能な限り推進されることを確約すること。
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  2. 国際的な優先課題
    特に中国やインドのような新興国市場において,英国は知的財産における国際的な利益を断固として追及すること。
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  3. 著作権のライセンス
    デジタル市場における、透明性があり,競争力があり,グローバルな英国企業のアクセス強化を図るため,英国は分野横断的なデジタル著作権取引所を設立すること。また,英国は,国境を越えた著作権のライセンスのための枠組設立へ向けた欧州委員会の取組を支援すべきである。
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  4. 孤児著作物
    政府は,孤児著作物のライセンスを可能にするための法制化を行うこと。
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  5. 著作権の制限
    政府は,フォーマット変換,パロディー,非商業的研究,図書保管を含む全ての可能性を実現するため、国内レベルでの著作権の例外規定を設けること。また,英国は,EU レベルでのデータマイニングを支援する例外規定を奨励すること。
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  6. 複雑な特許法枠組みとその他のイノベーションの障害
    ・イノベーションへの障害を阻止するため,政府は以下の項目を実行すべきである。
    ・他庁とのさらなる連携によって,滞貨を減少し特許出願の急増に対処するための国際的取組を促進する。
    ・特許が非技術的なコンピュータ・プログラムやビジネス方法などの分野へと拡大しないことを確保する。
    ・イノベーションと成長の観点によって設定される特許料金体系を構築するための国際的なパートナーと連携し,特許の藪の悪影響を除去する手段を模索する。
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  7. デザイン産業
    英国知的財産庁は,英国と欧州のレベルにおける政策評価の強固な基礎を確立し,意匠権とイノベーションの関係の証拠に基づく評価を実施すべきである。
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  8. 知的財産権の権利行使
    政府は,権利行使に基づく統合的アプローチ,教育,著作権および他の知的財産における適正な市場の強化および成長の手段を追及すること。
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  9. 小企業に対する知的財産アドバイス
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  10. 変化に対応した知的財産制度

これらの提言は、今年1月に欧州議会ジュリア・レダ議員が提案し今年7月に欧州議会で採択されたレポートと、いくつもの点で類似点がある。とくに重要な点は

Screenshot from 2015-09-14 15:37:29

3.EUレベルでの著作権枠組みの必要性
5.フォーマット変換,パロディー,非商業的研究,図書保管における著作権の例外措置の必要性
10.変化に対応した知的財産制度

あたりであろうか。

著作権法改正はかならずしも無料でコンテンツにアクセスしたい無数のフリーライダーのためにあるのではないことをこのレビューは示す。むしろ、インターネット30年を迎えた今日、国家のイノベーション、経済発展を促進するためにこそ、現代に即した著作権法改正は必要なのであり、その改正には、客観的証拠に基づいた制度枠組みの実行と、ある程度の著作権例外措置によるひらかれた情報へのアクセスが求められている。英国政府はこのレビューに迅速に対応し、数ヶ月後にはこのレビューを実際の政策に落とし込む取り組み目標を発表した。イギリスはEU諸国の中でも、もっとも先進的でデジタル時代に即した著作権法を持つ国として知られている。

ジュリアはEPIPのスピーチでこのような先進的な提言を発表したハーグリーブス教授に謝辞を示し、「著作権改正をより良いものにしていくための『客観的証拠』を、もっとアカデミックサイドから示してもらう必要がある」と訴えた。

このような議論が政府レベルで行われていることは素晴らしいことだとおもうと同時に、知財立国・デジタル立国を自称する日本も、世界各国の先進的な著作権議論の潮流に乗っていかなくてはならないと強く感じる。


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