新制欧州委員会人事とEUデジタル問題まとめ

ずーっと前に個人的に訳していたAccessnow.orgの記事をいまさらひっそり公開。
デジタル問題に関する欧州委員会の人事について。
WordPress使いこなせるようになりたいけどサイトのコンテンツがないと意味ないので、液体民主主義に関係ないものもあげていきます。

10月22日に、新制欧州委員会のメンバーが欧州議会によって正式に承認されました。今後5年間任期を務める27人のメンバーたちはEUの、そして世界のデジタルライツとセキュリティ問題に関わる大きな権限を持つことになります。今後EUのデジタルライツがどのように構想されていくかを知るため、新たに選ばれた欧州委員会メンバーの役割や責任について、Accessnowの記事を参考に見ていきましょう。

アンドルス・アンシプ…デジタル単一市場担当副大統領

アンシプ氏はデジタルセキュリティー問題に関して最も大きな権力を持っています。「ヨーロッパを情報・コミュニケーションテクノロジーにおいて世界のリーダーとすること。そのために、テレコム規制や著作権、データ保護法やラジオ電波管理の分野において国家を超えた協力を推進していくこと」。これが、アンシプ氏が欧州委員長 ジャン=クロード・ユンケル氏より委任されていることです。指名承認公聴会で彼は様々な問題に触れましたが、特に、セーフハーバー協定、ネットワーク中立性、反トラスト法に関する問題が重要だと考えられます。セーフハーバー協定はユーザープライバシー保護の基準を擦り合わせるためEUとアメリカの間に2000年に締結された法律で、一定の原則を満たすことでアメリカの企業に国境を越えたデータ移動を自由にさせるというものです。この協定はスノーデン氏がNSAの個人情報収集を暴露したことでその安全性が疑問視されていました。アンシプ氏はこれを見合わせる構えがあると述べています。また、アンシプ氏はネットワーク中立性は優先事項であるとの見方を示しており、「誰も市場を独占する権利を有さない」という原則に則りインターネットの整備を図っていくべきだと述べています。最後に、直接の名指しは避けたものの、Googleがかつて自社のサービスや製品に好意的に検索結果を改変していたと欧州委員から申し立てがあったことに言及し、「独占的地位の悪用は避けるべきだ」と述べています。

ギュンター・エッティンガー・・・デジタル経済&社会担当委員

デジタル経済&社会委員会は、テレコムやITなどのメディア・情報問題を管轄しています。エッティンガー氏は、データ保護、ネットワーク中立性、著作権改正、そして「忘れられる権利」に関して大きな権限を持っています。エッティンガー氏はバーデン・ヴュッテンベルク州知事を経て、現在ちょうどEUエネルギー委員の任期を満了するところです。彼はデジタルライツについては知識不十分で、それは彼の公聴会でも明白なものとなりました。クラウドコンピューティングがハックされ、セレブのヌード写真が流出した事件を受けて、彼はセレブたちを「愚か(dumb)」で、政府の保護を期待すべきでないと発言し、大きな批判を浴びました。

ディミトリス ・アブラモプロス… 移民・自治担当委員

アブラモプロス氏は人権に関する様々な問題を統括しており、多くの部分はデジタルライツの領域にも及んでいます。特に注目されるのは、データ保持の分野です。4月に欧州司法裁判所でEUレベルでのデータ保持指令は違法だとの判決が出たにも関わらず、彼はのちに、既に国内で履行された分にはこの指令は有効だと発言しました。この発言は欧州緑の党らの反対を受けましたが、彼はEUのe-プライバシー指令が有効だとの例を示し、国内法を修正する必要はないと述べています。しかしながら、e-プライバシー指令によって加盟国は一定のデータ保持法令の導入が許されてはいるものの、これらは厳密にEUの比例原則に則っていなくてはならず、またEUの人権法と両立するものでなくてはなりません。ほとんどの現行の国内法はこの規則から逸脱するものであるため、これらが欧州司法裁判所の判断に準拠するものとなることが望まれます。彼が現行のデータ保持スキームにおいて、また将来の法令においてどのように欧州司法裁判所の判決を鑑みるのか、動向を追っていく必要があるでしょう。

ヴェーラ・ジャウロヴァー…「法務、消費者&ジェンダー平等」担当委員候補

この新しく設置された委員会は、デジタルライツに関連して特にデータ保護の分野に重点を置いています。公聴会では、EUアメリカ間での個人情報転送を容易にしたセーフハーバー協定が、スノーデンの暴露のあと精査に晒されていることに関して多くの質問が集まりました。ジャウロヴァ氏は、「アメリカへの信頼は失われた」と発言し、協定の停止も視野に入れつつ、プランを見直す必要がある考えを示しました。ただし、彼女はそのプランが何であるのか、「信頼を回復するために」どのような手段が取られるべきなのかということに対し明確な発言はしていません。公聴会後、彼女はEUとアメリカの「共有された目標」は今なお重要であり、それに向けた協力は不可欠だと強調しています。

マルグレーテ・ヴェスティーガー…競争担当委員候補

Googleのトラスト戦略とハイテク企業による脱税計画が調査されている今、競争担当委員会はデジタル政策において重要な位置を占めています。Apple、Facebook、Googleが租税免除のためにアイルランドに拠点を置いているのは有名な話ですし、Amazonもまたルクセンブルクでの違法な国庫補助のために調査を受けています。前デンマーク経済担当相として、彼女はビッグ・データの使用とその反トラスト的悪用問題に取り組む方針です。公聴中、彼女は反競争的なビジネスにヨーロッパ全土に渡って立ち向かうと明言したものの、どのように反トラストの申し立てに取り組むのかの詳細については語られませんでした。幾度にも渡り、彼女は現行の調査の進行が望まれる、と強調しました。

フランス・ティンマーマンス… 規制向上、組織間関係、法治、欧州連合基本権憲章副大統領

この委員会はEUのロビイズム運動を統括しているため、企業の過剰な政策決定への関与に大きく影響すると考えられます。公聴中、彼はEUのロビイスト達に対し、現行の任意によるEUトランスペアレンシー登録を義務化すべきだと明言しました。

セシル・マルムストローム…貿易担当委員候補

彼女の公聴は多くの委員候補の中でも最も物議を醸したもののひとつとなりました。彼女は貿易担当委員としてEUアメリカ間の環大西洋貿易投資パートナーシップ(TTIP)の代表となる予定ですが、彼女の米国政府との近しい関係も相まり、彼女がEU市民の利益を代弁するにふさわしいかについての疑問が挙がっています。また、もうひとつの懸念として、マルムストローム氏の投資家対国家の紛争解決メカニズム(ISDS,ISD条項)への姿勢が問題となっています。ISD条項をアメリカ・カナダとの貿易協定交渉に盛り込むかに関して、企業の利益のために基本権と公共の利益が損なわれるとして多くの市民がこれに反対しているにも関わらず、彼女は自らの立ち位置を明確にせず、ISD条項を適用させるかは今後の交渉次第だと述べ、大きな反対を受けました。

ところで、欧州議会は委員長によって選ばれた委員候補の公聴会のあと、この委員会全体全体としてその是非を投票によって承認します。ここで、海賊党MEPであるジュリア・レダ氏は「反対」の一票を投じその理由をブログで説明しました。彼女は反対の理由を以下のように示しています。

  • インターネットポリシーへの懸念著作権法改正の延期。当初著作権法改革は6ヶ月以内に開始する予定だったが、デジタル経済&社会担当委員候補のギュンター・エッティンガー氏はこれを「来年」あるいは「会期前半」などとし態度を急変させた。また、セレブのプライベート写真が流出したスキャンダルに対する彼の発言はデータ保護の観点から許されるものではない。彼は議会のネット中立性の立場を支持しておらず、フランスの「インターネットブロック法」を「世界を『アナーキスト達』から守るため」擁護している。デジタル単一市場担当委員のアンドルス・アンシプ氏はその点、インターネット社会との対話を進めようという私の提案に賛同してくれている。しかしながら、エッティンガー氏との協力において彼がどのような動きをするのか注意深く見守る必要がある。
    ユンケル氏はデータ保護規制への迅速な対応を確約した。委員承認公聴会においてはこの目的へ向け多くのリップサービスが散聞され、どのように閣僚理事会と折り合いをつけていくかの具体的な提案が欠けていた。
  • トランスペアレンシーへの不信ユンケル氏はTTIP自由貿易協定の文書を公開すると約束していたにも関わらず、公開されたのは既にリークされていたたった20ページの交渉勅令のみで、さらなる文書公開の目処は立っていない。また、ISD条項に関しても、貿易担当委員候補マルムストローム氏が「明確に協定には適用されない」との一文を取り去ったり、委員長のユンケル氏が政治責任を副大統領のフランス・ティンマーマンス氏に委任したりと透明性が見えない。なお、ティンマーマンス氏が今日まで属していたオランダ政府はISD条項を擁護する立場である。
  • その他の不適な任命ティボル・ナブラチッチ氏は教育・文化担当だが、ハンガリー政府において出版の自由を抑制する動きに加担していた。
    ミゲル・アリアス・カニャータ氏はエネルギー担当委員候補となる直前まで、同族会社であるオイル企業を所有していた。また、彼は選挙機関中女性の品位を貶める発言をした。
    ジョナサン・ヒル氏は金融市場と銀行共同体担当委員だが、彼のコンサルタンティング・ファームの顧客がどのような企業や銀行なのか明らかにすることを拒否した。
  • ユンケル氏はより多くの女性を登用するように加盟国に働きかけたものの、女性委員はたった32.14%で、これは前委員会よりも低い数値だ。

出典1. Access.(19 October 2014).”Commissioners hearings: The many faces of Digital in the new European Commission”. Retrieved from: https://www.accessnow.org/blog/2014/10/19/the-many-faces-of-digital-in-the-new-european-commission

出典2. Julia Reda. (22 October 2014). “My Votes against the new commission”. Retrieved from: https://juliareda.eu/2014/10/my-vote-against-the-new-commission/


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